奇妙な肌寒さに姜維は目を覚ました。
 趙雲や馬超に誘われて酒を飲んだ。
 普段なら誘いに乗らないのだが、今日はたまたま孔明がいなかったから…。
 みんなが上機嫌だったまでは覚えている。
 だが、そこから先の記憶がない。
(ここ…は?)
 見知らぬ天井に、ここが自分の屋敷でも孔明の邸宅でもないことに気づく。
 そしてさらに驚いたのは、自分が衣をはだけられた格好で両手を寝台の支柱に縛り付けられて
いることだった。
 ふと人の気配を感じ、姜維はとっさに目を閉じた。
「まだ眠っているのか」
 聞き覚えのある声…ふわりと感じた体臭は趙雲のものだった。
 唇に柔らかいものが押し当てられる。
 それと同時になにかが流れ込んできた。
 思わずむせ返り目を開ける。
 そこに微かに唇を歪めた趙雲の顔があった。
「気がついてしまったか」
「趙将軍、これはいったい…お戯れはやめて早く解いてくださいませ」
「それはできんな」
 趙雲は姜維の上に覆いかぶさってきた。
「これを解いたら、お前はあの人のところへ戻ってしまう…」
 言っている意味がわからずに姜維は緩く首を振る。
 その顎を捕らえて趙雲は唇を重ねてきた。
「ん…うっ」
「今宵はどうあっても俺のものにする」
 信じられない言葉に姜維は耳を疑った。
 今までもよく思いを寄せているというような言葉は聞かされたが、それらはすべて冗談としか受
け止めていなかった。
 趙雲のことが決して嫌いというわけではない。
 しかし趙雲を恋愛の対象と見たことはなかった。
 なにより自分には…孔明がいた。
 趙雲の唇が首筋を這う。
 指先で胸の突起を嬲られただけでせつない吐息を漏らしてしまう、自分の淫らな身体がいやだった。
 身体がどんどん熱くなってくる。
 ようやく先ほど含まされたものが、酒や水の類でないことに気づいた。
「う…ううっ、解い…て」
 涙が浮かんでくるが趙雲は姜維の哀願を聞き入れない。
 下帯の上から触れられただけで姜維のそれは敏感に反応し立ち上がっていた。
 下帯が外されれると姜維の熱はさらに羞恥で高まった。
 涙でかすむ目の前に、姜維の透明な液体で濡れた趙雲の指が突きつけられる。
「感じやすいのだな、姜維は…」
 それから趙雲はおもむろに身体をずらし、姜維のそれを口に含んだ。
「い…いやああーっ!」
 激しく抗うが縛めは解けない。
「あ…ああっ…あーっ!」
 巧みな舌の愛撫に姜維はあっけなく果てていた。
(趙将軍、どうして…もう…これで解放して…)
 しかし趙雲の欲望はそれだけに留まらず、姜維の両足を抱えてグイと押し上げた。
 膝が胸につくほど曲げられる。
「い、いや…そんな…」
 姜維とてこんなことをまったく知らないわけではない。
 現に何度も孔明に愛されたことがある。
 だがいつも温厚な趙雲の豹変振りに恐怖を感じていた。
「いやああっ! 丞相っ!」
 思わず孔明に求めた助けに、趙雲の表情が一変した。
「今お前を抱いているのは俺だ。あの人のことなど思い出させん」
 熱い塊が姜維のそこに押し当てられる。
 裂かれる鋭い痛みとともに塊が姜維の中に入ってきた。
「う…ああっ!」
 目がくらむ。身をよじるたびに両手の皮膚が破れた。
 信じていた趙雲に犯されたこと、そして図らずとも孔明を裏切ってしまった心の痛みが、姜維の
中に鈍く広がっていった。

 どうやら気を失っていたらしい。
 汗ばんだ身体が気持ち悪かった。
 両手の縛めもまだ解かれていない。
 横に寝そべっていた趙雲が、姜維の髪を一筋とって口づけた。
「俺を素直に受け入れてくれればこんな無体な真似はしなかったものを…もうお前を帰さない…」
 趙雲の言葉に戸惑いながら、姜維にはあふれる涙を拭うことすらできなかった…。
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