積極的なのは姜維のほうだった。
 趙雲の頬を挟み、何度も何度も口づける。
 趙雲も姜維をきつく抱きしめて舌を絡め、口内を貪った。
 姜維は引き締まった趙雲の身体に手を這わせ、その猛りに触れた。
 冷たい手の感触に、一瞬趙雲の身が震える。
 そっと身体をずらした姜維は趙雲の男根に頬ずりし、おもむろに口に含んだ。
「…姜維殿…」
 趙雲は姜維の髪を撫でながら、ぎこちない愛撫に満足しようとする。しばらく口での愛撫を続け、
姜維はやおら起き上がって趙雲の腹にまたがった。
 手でしっかりと男根をつかみ、自分の菊門へと導いていく。
「将…軍…ほかの者に穢された…身ですが…」
 潤ってもいないそこに差し入れようとすると趙雲自身にも痛みを与える。姜維の顔が苦痛に歪んだ。
「く…うっ…」
 趙雲は崩れそうになる身体を支えた。
「バカな…このような無理をしたら、そなたがつらいだけではないか…」
「あ…将軍なら…平気です…」
 姜維は無理に笑おうとする。汗で貼りついた額の髪をどけてやりながら、趙雲は思いきり抱きしめてやった。
「姜維殿…愛しい…」
「私も…私も将軍をお慕いしております…」
 趙雲は手近の燭から油をひと指すくいとり、そっと姜維の菊門に塗りつけた。ぬめりを帯びた指が静かにもぐる。
「あ…将軍…っ」
 内部で指を蠢かせるとうっとりとした顔で腰を振った。
「将軍…私の中に…きてください…」
「…よいのか?」
「はい…ぜひ…」
 趙雲は姜維の細い腰を抱えると男根をあてがい菊門をこじ開けながら侵入させていった。
「ああ…っ!」
 姜維の口から苦痛だけではない声が漏れる。勢いにまかせ何度か腰を打ちつける。快感が腰から脳へと
突き抜けた瞬間、趙雲の中でなにかが弾けた。
 姜維の恍惚とした表情は艶かしささえ感じさせて…あの方とは違った。
 阿斗…今は劉禅公嗣。
 趙雲が阿斗を初めて抱いたのは、今から五年も前になるだろうか。
 触れるだけで十分だった阿斗は、まるで趙雲が自分のものであるかのように趙雲を求めるようになった。
 初めのうちはその求めにも応じていたが、阿斗が即位し名を変えたとき、これ以上阿斗の元に留まるべきではないと
判断した趙雲は、進んでこの辺境の守備職に就いたのだった。
 そんなことを思い出したのは、同じ柔らかな身体だったからだろうか…。
 気がつくと趙雲は姜維の身体を抱いたままうつらうつらしていた。
「…将軍…」
「姜維殿…身体は大丈夫か?」
 姜維はコクンとうなずき再び趙雲に身体を預けてきた。
「将軍…私の口に…口付けてください…」
 趙雲が望み通りにしてやる。
 いつしか浮かんでいた姜維の涙がこぼれ、趙雲の瞼に落ちた。
「うれしゅうございました…」
「…私もだ。私も、心のどこかでそなたとこうなることを望んでいたのかもしれない…」
 趙雲は姜維をしっかりと抱きしめ、言い聞かせるように口を開いた。
「…もう後戻りはできない…私とこうなったことを、後悔しておらぬか?」
「はい…後悔などしておりません。将軍になら…私はどこまでもついてまいります」

 ふたりの関係は一度だけでは終わらなかった。
 罪深いことと知りつつも、愛するが故にその身を求めてしまう。
 幸いに、というか周囲の人間たちはそんなふたりの関係にだれも気づかなかった。姜維が趙雲の寝室を訪れても、
副将が将軍と夜通し話し込んでいるという感覚からか不審に思う者もいない。
 ただひとり魏延だけはその様子に薄々気づいてはいたが、あえて諫言しようとはしなかった。
(あの方が…真に愛する者を見つけられたのは、初めてではないのだろうか…ならば私はなにも言うまい)
 正当化するつもりなぞ毛頭ない。
 ただ…堕ちていく…どこまでも…どこまでも…。
 それですら、姜維は趙雲のためならかまわなかった。
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