ネコのモウトクと人間のゲンジョウが住む山にも夏がやってきました。
 そんなある日のこと
「モウトク、今、戻ったぞ」
 外から帰ってきたゲンジョウがなにか、きらきら光るものを持っています。そのきらきら光るものは、
出窓の近く、ぬいぐるみのカンウのそばに置かれました。
(なんだろ、あれ?)
 モウトクは目を輝かせてそれを見上げました。
「おっと。モウトク、これは預かり物だからな、触るんじゃないぞ」
 いつもはそんなこと言わないのに、今日のゲンジョウはちょっと怖い顔です。
(アズカリモノってなんだろ?)
 ゲンジョウがいない隙に、カンウの上によじ登ってながめてみます。
(カンウは、アズカリモノって知ってる?)
 でもぬいぐるみのカンウはなにも言ってくれません。
(カンウも知らないんだ)
 きらきらと光る入れ物の中には水があって、その中に赤いひらひらとしたのが動いています。
(あれれ? なんかひらひらしてる…)
 ゲンジョウはキンギョのシンキを連れて帰ってきたのです。しばらく旅行に出かけるというゲンジョウの
友人が、子供が大事にしているシンキをゲンジョウに預けたのでした。
(うふふ、こんにちは)
 シンキはひらひらと近づいてきます。
(あなた、だれ?)
(モウトク…えっと…)
 もっと話しかけようとしたとき
「こらっ、モウトク! シンキに近寄るんじゃないっ!」
 戻ってきたゲンジョウが大きな声を出したので、モウトクはびっくりして窓から飛び降りました。
 ゲンジョウはシンキの鉢に近づき、モウトクがいたずらしていないかを確かめます。
「触っちゃいかんとあれだけ言っておいただろう!」
(なにもしてないよっ)
 一生懸命に訴えますが、ゲンジョウにモウトクの言葉はわかりません。
 でも、なんだかシンキを見ているゲンジョウは、楽しそうです。モウトクはそれが気に入りません。

 ある日、モウトクは我慢できなくなって出窓に飛び乗りました。シンキの鉢を前足でつつきます。
(おいアズカリモノ、ゲンジョウはずっとモウトクが好きなんだからな。モウトクのほうがたくさん
ゲンジョウと一緒にいるんだからな。いばるんじゃないぞ)
 でもシンキはモウトクなんか無視して、すいすいと泳ぎ回っています。怒ったモウトクは思わず
鉢を叩きました。
 バランスを崩した鉢は出窓から落ち…割れてしまいました。
 カンウが濡れて、床が水浸しになって、その上でシンキが苦しそうにバタバタしています。
「あっ!」
 鉢の割れる音で飛んできたゲンジョウはあわててシンキを拾い上げ、水の入ったコップに入れました。
(ゲンジョウ、そいつなんか放っておきなよ)
 ゲンジョウは床を拭き終わると、まとわりつくモウトクに大きな声を出しました。
「モウトク! お前はいつからそんな悪い子になったんだ!」
 見たこともないほど怖い顔をしています。
(どうして? ゲンジョウ、オレのこと好きって言ってたじゃない。なんでそいつばっかり大事に
するんだよ)
 モウトクは反論しますがわかってもらえません。
「少し外で反省しろ!」
 こんなこと初めてです。モウトクは家の外に出されてしまいました。

 夜になっても家に入れてもらえる気配はありません。
 モウトクは家の横にある小屋の中ですねています。小屋の窓から明るい光が差し込んできました。
 どうやら今夜は満月のようです。でも今のモウトクにはどうでもいいことでした。
(やだよ…こんな気持ちでヒトになるの、やだよ…)
 けれども満月はモウトクの気持ちなんかかまいません。ゆっくりとその姿を現していきます。
 やがてモウトクはいつものようにヒトの姿になりました。そうっと家の中をのぞいてみますが
ゲンジョウはいません。でも…だれかの気配がします。
(アズカリモノもヒトになったのかな…)
 違います。
 どうやらゲンジョウが留守にしているあいだに、泥棒が入ったようです。
「ダ…レ?」
 泥棒はモウトクにびっくりしました。でもまだ子供だし、裸だし。
「オレはここの人の知り合いなんだよ。どうやら留守みたいだな」
「ウ…ン」
 泥棒がモウトクの下半身に気づきました。
「うん? 一人前に興奮してるのか…さては悪いことしてた最中だったんだな」
 もちろん泥棒はモウトクが本当はネコだなんて知りません。
「こっちへこい。な、かわいがってやるから」
 なんとなくいやなものを感じてモウトクは逃げようとします。でもそれより先に泥棒がモウトクを
つかまえていました。
「イ、ヤ…」
「そういうな。こんなにしてるくせに…」
 泥棒はモウトクを膝に抱き、小さな男根を握り締めました。
「アアッ…!」
 泥棒の手が動くとクチュクチュといやらしい音がします。モウトクはいつしか泥棒にしがみついて
いました。
「ヤッ…イヤア…」
「すぐいい気持ちにしてやるぞ」
 モウトクのお尻に熱いものが当たっています。
(あ、ああ…オレ、オレ…どうにかなっちゃうよぅ)
 観念してギュッと目をつぶったときです。
「だれだっ!」
 声のほうに目をやれば猟銃を持ったゲンジョウが立っていました。おそらく泥棒はナイフのひとつも
持っていなかったのでしょう。モウトクを放り出すと一目散に逃げ出しました。
「モウトク、大丈夫だったか?」
 身体は疼いているままですが、モウトクはゲンジョウに背中を向けていました。もちろん返事も
しません。
「モウトク、怪我したのか?」
「ゲ…ジョ…オレ…キライ…」
 モウトクの言葉の意味がわかったゲンジョウは、モウトクの横に腰かけました。
「なんだ、まだすねているのか」
「キラ…イ」
 ゲンジョウはいつものようにモウトクを抱き上げると、自分の膝に乗せました。まだ上を向いて
濡れている小さな男根を握り締めてやります。
「ア…ッ」
「お前はいい子だよ。もうシンキは返してきたから心配するな」
「ホ…ント?」
「ああ、本当だ。お前を放っておいて俺も悪かった」
 ゲンジョウの手が動いてモウトクを気持ちよくしていきます。
 ふと、モウトクはゲンジョウの手を逃げると四つん這いになってお尻を突き出しました。
「シ…テ」
 恥ずかしそうにゲンジョウを振り返ります。
 ゲンジョウは苦笑し、自分のそれを取り出してモウトクの腰を抱えました。
 熱くて大きなそれがモウトクの中に入ってきます。
「アッアッ…アアーッ!」
 最初は痛かったのに、最近は痛くありません。ゲンジョウの温かくて大きな手に抱きしめられていると
気持ちいいんです。
 首を巡らせてゲンジョウにキスしてもらいます。お腹の中がカアッと熱くなりました…。

 翌朝、元に戻ったモウトクは寝ているゲンジョウを起こさないようにして、そっと出窓へいってみました。
もちろんもうシンキはいません。
(アズカリモノ…いなくなっちゃった)
 そうしてちょっと意地悪だったかなとも思います。
(ねえカンウ、あのヒラヒラ、かわいかったよね)
 ぬいぐるみのカンウが笑ったような気がしました。
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