それは初夏を思わせるほど暑い日、夏侯惇は曹操の自宅を訪れていた。
 曹操と卞氏のあいだに生まれた嫡男、子桓もすくすくと成長している。
「よくきてくれたな元譲」
 子煩悩の曹操が親馬鹿振りを発揮していた。
「子桓は大きくなったな」
「はは、まだやっと首が座ったところだぞ」
 久しぶりの再会に話が弾む。
 そこへ卞氏が顔を出した。
「少し出かけてきますが、子桓をお願いできます?」
「ああ、かまわんとも。ゆっくりいっておいで」
 どうやら優しい夫でもあるようだ。
 しばらくしてから、曹操の話はやはり卞氏と子桓のことになっていった。
 夏侯惇の中に沸々と嫉妬のようなものが込み上げてくる。
「孟徳、子供が生まれてから変わったな…」
「そうか?」
「ああ、以前のお前はそんな顔で、妻や子供のことを話すようなことはなかった」
 曹操は夏侯惇が冷やかしているのだと思っていた。
 だが、それが冷やかしなどでないことは、夏侯惇の行動でわかった。
「な、なにを…」
 夏侯惇は曹操を捕まえるといきなり服を剥ぎにかかった。
 抵抗しようにも子桓を抱いているのでできない。
 夏侯惇は後ろから曹操を羽交い絞めに士ながら手を前に回した。
 たくましい胸についた褐色の突起をつまみ、こすり上げる。
「よ、よせ…っ」
「父親になったからといってそうすました顔をするな。以前のように乱れてみろ」
 こらえきれずに曹操は子桓を手放した。
 床に置かれた子桓はそれでもキャッキャッと笑い声を上げている。
 夏侯惇の手が曹操の下肢へと伸びてきた。
 下着の中の男根をつかみ緩々としごき上げる。
 曹操は床に四つん這いになりながら愛撫を耐えていた。
「う…うう…」
「どうした? 自分がよがっている顔を子桓に見られるのがいやか?」
 夏侯惇が意地悪く尋ねてくる。
「元…譲っ」
「ずっと彼女が相手で俺のことなど忘れてしまったか? こうされるのが好きだっただろう?」
「いや…だ」
 口ではそう言っても呼吸が荒くなっていく。
 男根の先端からは先走りの液が溢れ出し、夏侯惇の指がかすめるたびに卑猥な音がした。
「後ろのほうにも欲しいんじゃないか?」
「も、もう…」
「我慢できないか」
 先走りでぬめった指を菊門に這わせ、軽く差し入れてみる。
 最初は抵抗があったもののすぐに締め付けてきた。
 指をごく浅いところでうごめかせ快感をあおる。
 曹操が焦れたように腰を振った。
「欲しいのなら欲しいと言え、孟徳」
「あ…ああっ」
 犬のように這いながら、逃げようとするような、それでいて夏侯惇に腰を押しつけようとするような
…曹操の乱れた心にも似た動きをする。
「そうか、子桓が見ているからな。ではやめよう」
 夏侯惇は指を乱暴に引き抜いた。
「あ…っ」
 曹操がせつない表情で振り向く。
 唇が小刻みに震えていた。
「欲しいのか、孟徳」
 唇をゆがめて夏侯惇が尋ねる。
 曹操の頭がコクンと揺れた。

 夏侯惇の男根が激しい勢いで曹操を突き上げている。
 狭い菊門を出入りするたび、曹操の内部がめくれ上がった。
「う…はぁ…」
「あうっ…あうっ」
 ふたりの荒い呼吸に子桓のあどけない声が混じる。
 それがひどく滑稽だった。
 子桓は元気よく足を突っ張らせ、身体をジタバタさせて曹操のそばへ近寄ってくる。
 曹操は自分の痴態を、赤ん坊とはいえ息子に見られるのを恥じて逃げようとする。
 しかし夏侯惇はそれを許さなかった。
「ふふ…孟徳、さすがにお前の息子だな。どうやら俺たちに混ざりたいようだぞ」
「やめ…やめてくれ、元譲…」
 夏侯惇は曹操の男根から手を離すと子桓の小さな手をつかんだ。
 その小さく柔らかな手を曹操の男根に導く。
「い、いや…だ…ああ…」
 曹操の目から涙がこぼれる。
 子桓はどんな赤ん坊でもするように、曹操の男根を力いっぱい握り締めた。
 薄い爪がつかみきれない茎に食い込む。
「ああーっ!」
 勢いよく迸った曹操の精は、子桓の脇の床に飛び散った。

「お前は…ひどい男だ」
 遊び疲れたらしくすやすやと眠る子桓に毛布をかけながら、曹操は恨みがましく夏侯惇を見た。
「ひどい男だと思うなら嫌ったらどうだ?」
 夏侯惇はその曹操を抱き寄せささやく。
 ややあってから曹操は目を伏せて言った。
「できないことを言うから…ひどい男だ」
inserted by FC2 system