なかなか豪奢なホテルだった。
 一般のビジネスマンが仕事で泊まるようなホテルではない。
 一般のなら…だが。
「いつもこんな贅沢をしているのか」
 夏侯惇は少々顔をしかめた。
 それに対して曹操は小さく笑うだけだ。
 秘書の郭嘉が病気になったりしなければ夏侯惇がついてくるような仕事ではなかったのだが、
曹操に無理やり連れてこられたというのが正しいだろう。
「たまにはいいだろう。私はこれくらい広くなければ落ち着かん。それとも…スイートのほうが
よかったか?」
「バカを言え。先に風呂を使うぞ」
「好きにしろ。私は今日の報告書をまとめておく」
 バスルームへと向かった夏侯惇を見送って、曹操は机の上に置かれたパソコンへと顔を向けた。
 報告書の作成を終えて、なにもすることがないのでぼんやりと窓の外の夜景などながめている。
「おい、空いたぞ」
 振り返れば夏侯惇が濡れた髪を拭きながら立っていた。
「ああ、では私も風呂へ入ってくるか」
 バスタブに新しい湯を溜めその中で足を伸ばして横たわる。小さく息を吐くと一日の疲れが
取れていくような気がした。
 ゆっくりと入浴を楽しみバスローブ姿で寝室へ戻ってくると、ツインのベッドの片方ですでに
夏侯惇が眠っていた。
「おい、元譲」
 夏侯惇はときどきわずらわしいことがあると眠った振りをすることがある。
 たぶん曹操に話しかけられるのが面倒くさくて今も眠った振りだろうと思い、曹操は夏侯惇の
ベッドに腰かける。
 まだ目を開ける様子はない。
 曹操は身体を倒し夏侯惇の唇に口づけた。
 わずかに開いた唇に舌を差し入れ夏侯惇の舌に絡めてみる。
 いつも吸っているタバコの味が曹操の舌に伝わってきた。
 夏侯惇が目を覚まさないのをいいことに曹操はさらに大胆になった。
 バスローブの胸元を開きたくましい胸に顔を埋める。
 それから褐色の突起を口に含んで舌先で愛撫し始めた。
 手はそろそろと下肢へ伸びていく。
 裾を割り下着の中に差し入れて熱く滾るものに触れた。
「元譲…起きんと、弄るぞ」
 確かめるようにそう言うが、このまま眠っていてくれてもかまわないとも思う。
 曹操は乾いた唇を舐めると夏侯惇のそれをおもむろに口に含んだ。
 心持ち硬度を増してきたと思ったとき…ふいに頭を押さえ込まれた。
 喉の奥へと押し込まれ曹操は思わず抵抗する。
 顔を上げれば目を覚ました夏侯惇が曹操の頭に手を添えていた。
「…孟徳、俺の上にこい」
 曹操はにやりと笑って濡れた唇を手の甲で拭うと、夏侯惇の腰にまたがった。
 ゆっくりと下ろしていけば、それは曹操の体重でごく自然に飲み込まれていく。
「お…おお…っ」
 狭い入り口を開かれる瞬間、曹操は端正な顔を歪めて小さくうめいた。
 だがすべてが自分の中に収まってしまうと呼吸を整えて、自分の下にある夏侯惇を見据えた。
「フ…まるで暴れ馬に乗っているようだな」
「あまり無体なことをすると明日に差し支えるだろう」
 そんなことを言いながら夏侯惇は曹操の腰を両手で抱え、下からグイと突き上げた。
「むぅ…っ」
 食いしばった歯のあいだから声が漏れる。
 ただでさえ入浴後の火照った身体に火がついて、曹操の身体から浮かんだ汗が夏侯惇の身体へと
滴り落ちていった。
 夏侯惇は曹操のバスローブをはだけ、痛みに萎えている曹操のそれに手を添えた。
 そちら側にも快感が欲しくて曹操は腰を動かす。
 頑丈にできているはずのベッドがふたり分の男の動きにギシギシと悲鳴を上げた。
「く…ううっ」
「うむ…っ」
 感極まったうめき声を上げ、倒れこんできた曹操の身体を夏侯惇がしっかりと抱き止めた。

 ふたつあるベッドの片方はシーツも乱れず冷たいまま。
 もうひとつは…体躯のいい男ふたりが寝そべっている、臍の上に灰皿を乗せた格好で。
「明日の朝食はいらんな」
 曹操の吐き出す煙がゆらゆらと天井へ昇っていく。
 それに重なるように夏侯惇の吐く煙が追いかけていった。
「勝手にしろ。だがいつまでも寝ていると…」
 夏侯惇は曹操のほうを見て意味ありげに唇を歪めた。
「今度は俺が襲うからな」
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