このところ、森にはいろんな動物が増えてきました。そうして毎日のように争い、逃げ出したり
食べられたりしています。
 ウサギの曹操はというと、オオカミの夏侯惇に夏侯淵、トラの許チョ、それから同族の野ウサギの
曹仁などを味方にして、キツネの郭嘉が言うとおり森の一部を自分のものとしておとなしくして
いました。
「曹操さま、力の強いもの同士が争えばどちらかが倒れます。曹操さまは一番最後に残ったものだけを
倒せば、森の王さまになれますよ」
 そんなある日のこと。
 曹操はお供もつけずにひとりだけで森の中を歩いていました。なんとなくひとりで散歩したかったので。
いえ、もしかしたらそっけない夏侯惇の気を引きたかったのかもしれません。
「もうずいぶんきたかなぁ」
 あまり鳥の声も聞こえません。ふと、広い場所に出ました。
「お水、あるかな」
 でも曹操の鼻はひどくいやな匂いを嗅ぎつけました。ほとんど同時にぬっと現れたものがあります。
「フン…俺たちの縄張りに入ってくるとは、たいした度胸だな」
 野ブタの董卓とイノシシの呂布です。
「あ…」
 曹操は回れ右をして駆け出しました。でも呂布の足の速さにはかないません。あっというまにつかまって
董卓の前に連れてこられました。
 董卓は曹操をながめいやな笑いを浮かべます。
「呂布、いつものようにネズミやミミズはもう飽きた。わしはこのウサギを食いたいぞ」
「御意」
 呂布は鋭い牙で曹操を突き上げようとします。曹操は逃げ惑いました。
「わああん、だれか助けて!」
「ええい、おとなしく食われてしまえ!」
 ところが曹操は逃げるうちに董卓の大きな身体にけつまずいてしまいました。
「も、もうダメだ…っ」
 耳が半分折れた頭を抱え、曹操は覚悟を決めました。そのとき、
「おい、うちの王さまになにしてる」
 茂みの向こうから現れたのは夏侯惇と許チョでした。
「げ、元譲、仲康っ」
 曹操の顔が明るくなります。
 夏侯惇と許チョは一声吠えると呂布と董卓に襲いかかりました。さすがにオオカミ相手では分が
悪いと思ったのか、董卓はその重い身体を起こしのろのろと逃げ出し始めました。
「呂布、お前の相手はオイラだぁ! 元譲さまは曹操さまを連れて逃げろぉ」
 許チョは呂布を牽制しつつわめきます。夏侯惇は曹操の首を咥えると自分の背中に放り上げました。
「許チョ、無理はするなよ」
「心配すんなぁ。すぐに追いつく」
 夏侯惇は急いでその場を離れました。

 ずいぶん逃げてきました。夏侯惇は泉のそばで曹操を下ろします。
「孟徳、どこも傷めていないか?」
「う、うん…ちょ、ちょっと怖かったけど、平気だ」
「まったく…郭嘉に心配をかけるのもたいがいにしろよ」
 そう言って夏侯惇は曹操を抱き寄せました。
「あいつらになにもされなかったか?」
「う、うん。元譲が助けにきてくれたから」
 曹操はまだ震えている身体を夏侯惇に預けました。優しく曹操の身体を抱いていた夏侯惇の前足が、
曹操の小さな男根に触れます。
「げ、元譲?」
「じっとしてろ…安心したら腹が立ってきた」
 前足が意地悪く男根を弄ります。曹操は鼻をヒクヒクさせながら息を荒げていきました。
「元譲…元譲っ、や…やだぁっ」
「暴れてもムダだ…入れるぞ」
 曹操のお尻に当たっている熱い塊が中に入ってきます。
「い、いたぁいよー! で、でも…なんだか…気持ちいいっ」
「よしよし」
「あっあっ…ああーっ!」
 お尻がだんだんと熱くなっていきます。そうして前足でこすられていた曹操も自分のお腹を汚していました…。

 しばらくたって許チョが戻ってきました。
「あの野郎、いいところまで追い詰めたのに、仲間がきてにげられちまったぁ…あん? どうしたぁ、
曹操さま、け、ケガしたのかぁ?」
 夏侯惇の背中でぐったりとしている曹操を見て、許チョは驚いた声をあげます。それを夏侯惇が
制しました。
「やつに脅かされ、逃げ回って董卓のブタにつまずいたそうだ。足が痛くて歩けんのだとさ」
 うそです。曹操はさっき夏侯惇に愛されたせいで、疲れて眠ってしまったのです。
「お、オイラが曹操さまを乗せようかぁ?」
 心の優しい許チョが申し出ます。しかし夏侯惇は首を振りました。
「馬鹿、お前自身あいつと戦って傷だらけだろうが…孟徳のことは俺に任せておけ」
「郭嘉どののところへついたら、曹操さまはすぐに治るよなぁ?」
「ああ、すぐによくなるさ」
 これに懲りて少し自重してくれるとありがたいのだがな、と夏侯惇は背中の曹操を振り返りながら
思いました。
 もうすぐ森は日が暮れそうです。
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